D&Dとファー・ローズ・トゥ・ロード

 Twitterでファー・ローズ・トゥ・ロード(以下、Fローズ)が面白いのでやりましょうと言う話をしていたところ、ご質問を頂いたので回答のために書きました。

 

 大雑把に言うと 以下のような話をしています。

 ・Fローズでは昔のD&Dに比べて他者とのコミュニケーションや感情を細かく描く

 ・そのかわり戦闘関係のルールは少なめ

 ・なので生まれる物語の雰囲気も結構異なる

 

 以下本文です。

 私の限られた知識でD&DとFローズの比較についてご説明しますと。*1

 

 D&DとFローズはどちらもRPGという「自分の身代わりのキャラクターを通じて物語を作るゲーム」なんですけど、キャラクターを表現するデータのつくりが全然違っていて、何を再現するかというコンセプトが大きく違うんじゃないかな、と思っております。

 かつてのD&Dのキャラクターは基本的に「なにができるか」特に「どのくらい強いか」がもっとも重要(ファイターは武器を振るう、魔術師は魔法を使う)で、さらに冒険が進んでレベルが上がると「できることが増えて、強くなる」んですね。これはこれで物語の王道だと思います。『ドラゴンボール』とか。

 

 一方で登場人物の「できること」がそんなに増えない物語も多いです。
 たとえば、『指輪物語*2のフロドは剣を振るのがうまくならないし、新しいワザを覚えたりもしない。その代わりに、旅の中で色々な人に会ったり、考えたりする。それが一応メインストーリーだと思います(まあそれ以外にも面白いところは大量にありますけど)。

 FローズはD&Dと同じようなファンタジー世界を舞台にして、昔のD&Dでは再現しづらかった上記のような要素に焦点を当てたゲームだと思っています。

 

 わかりやすい点として、キャラクターを表わす能力値の話をします。

 

 Fローズでは「何ができるか」を表わす能力値は4つ(D&Dでは6つ)。対して、他の人からどう思われるか、どんなやり方でコミュニケーションを取るのが得意か、を表わす魅力が4つあります。
 また、D&Dですと強さを表わす戦闘のためだけの数字とルールがあります(命中判定、AC、ラウンド進行の詳細な戦闘ルール)。Fローズでは戦闘ルールはかなり簡素な一方、キャラクターが今どんな気持ちなのかを表わす感情というパラメータが10種類あり、どのように増減するかもルールがあります(例えば敵を殺すと悲しみや怒りの感情が増えたりする)。

 D&Dでは魅力は1つにまとまっていますし、気持ちや考えについてもアライメント1つを選ぶだけ、という非常に簡単な処理になっていますね。

 FローズではD&Dに比べて他者とのコミュニケーションや感情を細かく描くようになっていて、そのかわり「できること」「強さ」に関するデータは減らしてある。

 だから判定のルールやゲームの進行はD&Dとそれほど大きく違わないのですが、プレイするときの感覚はかなり異なります。キャラクターの感情の動きが数字で見えるので、別の種類のファンタジー小説を読んでいるような感覚が得られると思います。

 

 Fローズの特徴は他にも色々ありますし、D&Dも強さを求めて戦うばかりのゲームではないのですけど、かなり単純化しての比較すると、以上のようなことは言えると思います。

 

 以下は、いくつか補足的なことを。

 

補足①:そもそもFローズが30年近く前のゲームなので、今のゲームに比べて古びたところは多いです。一方、D&Dはその後3回ほど大規模なバージョンアップを経ているので、現行の第5版では、キャラクターの内面についても「背景」という形で表現するルールがあったりします。
 とはいえ、ファーローズの明確なコンセプトと少ないルール(A4版で約50ページ)でそれが表現されている点は今読んでも素晴らしいですし、いささか古いところも含めて、今でも面白いゲームだと思います。

 

補足②:Twitterでは、私のフォローをしてる人(D&D好きが多い)に聞いてほしかったのでD&Dのアンチテーゼ、みたいに読める書き方をしてしまったのですが、そんなことはないです。
 D&Dみたいにキャラがどんどん強くなっていくことはないので、D&Dで発生する問題の一部(首ナイフ問題みたいな)は起きづらいです。でも感情の動きがわりとランダム表任せなので、時々別方向に面白いことにはなります(クトゥルフ神話TRPGの狂気が時々ギャグになってしまうのに近いかもしれない)。

 

以上

*1:私は初版のローズをプレイしたことがないです(大昔に友人に借りて読んだことがある程度)。ローズ・トゥ・ロードシリーズはFローズ以外は遊んだことがありません。D&Dは新和のクラシックD&D以降の各版を一応プレイしてきております

*2:ドラゴンボールと同じくらいメジャーな漫画でそういう方向性の作品があるといいんですが思いつけない